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wordpressの日記( https://yajiriinu.wordpress.com/ )の移植版

最近の野原

去年の映画「クレヨンしんちゃん謎メキ花の天カス学園」を見た。エリート育成を志す小中高一貫校の体験入学に訪れた野原たち園児が、大人になるということを知りつつ今全力で子どものままでいることを謳歌する話だ。

個人的には主人公はトオルだとおもう。お金持ちで頭もよくて勉強への意志もあるトオルは、野原たちかすかべ防衛隊がそれぞれ異なる進路を歩み違う友達ができてバラバラになってしまうことを予感していた。だから4人をエリート学園の体入に参加させて、同じ道を志させようとしたのだ。こう聞くと、トオルはかなり子どもらしくてかわいいと思えるだろう。一番のエリートが一番のワガママチャイルドだなんて。

結局、野原たちはエリートになってトオルと一緒にいようという考えより、限られてはいても濃密な今のバカ騒ぎしている時間を楽しむことを選んだ。これは青春を描く学園ドラマがたどり着く結末として王道ではあるが、描き方が最高だった。別れがあることを感じつつ回避しないという選択を敢えてする意味が、この映画を見るとわかる。しかもそれをかすかべ防衛隊や学園の生徒たちだけでなく野原家の大人たちやひまわり、シロにも語らせることで、"青春"という語が持つ一般的な意味を超えた人生全体にまで視点を敷衍させているところが見事だ。本当に素晴らしい作品だった。最近の野原映画にこんな名作があろうとは。