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wordpressの日記( https://yajiriinu.wordpress.com/ )の移植版

おせち

おせち好き?おせちには「お」がついているから、10代のころはてっきり好かれているかと思っていた。おにぎり、お豆腐、おせちの三大巨塔だと本気で考えていた。100円でおせちの具をそろえることもできるし、おでんのようにアソートな感じがエンタメ性に優れた部分もあり、ついでにめでたく、味もおいしいし、見た目も華やかでかわいらしい。これほどに文化的で豪勢な料理はほかにない。

しかし世間的におせちの具は強いて尊ばれることはないらしく、黒豆も煮るの大変なのにあんまり好きだと言って食べる人はいないし、伊達巻と栗きんとんは子どものおやつにしかならなくて、数の子、なます、昆布巻き、ごぼうはあんなにおいしいのに誰も見向きもしない、最後に残ったかまぼこと伊勢海老だけがおじさんのお酒のつまみになるという塩梅に、地味で退屈な感じに扱われてしまう。

特に昆布巻きの不遇ぶりは見ていられない。ニシンも昆布も嫌いだから昆布巻きが嫌いだという人も少なくないそうだ。あんなにおいしいのに。昆布というものはふつうあんなふうにはならない。昆布巻きの昆布はシート状に巻いてあるからまあまあの厚みがあるが、調理の段階でどういうわけかすごく柔らかく、佃煮のように味のしみた豊かな香りと適度な歯ごたえを残して口どけていく。ニシンの筋肉の繊維質は最後まで口の中に残り、しっかりと満腹中枢を刺激してくれる。栄養的にもプロテインと食物繊維とミネラルを豊富に含んでいて、塩分が強い(和食だから仕方ないが)ことに目をつぶれば完璧だ。

正直なますや黒豆は私も積極的にいただくことはないが、ああいったものがあるからこそお重全体の彩が調和して主役の真っ赤な海老や真っ赤なかまぼこ(赤かまは白かまより人気で、三賀日が終わると白かまばかり大量に積まれて値引きされていて、不遇)が引き立つというもの。引き立て役のみならず、それぞれに担う縁起かつぎ的な役割が与えられていてそれを健気に全うしてくれているというのに。やはり、おせちをイチからつくったことがないからこんなことになるんだ。おせちを作れ。お重を購入しろ。大根をたくさん細切りにして、おせちの翌日以降の晩御飯は切干大根とマメと筑前煮だけになれ。茶色上等。