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wordpressの日記( https://yajiriinu.wordpress.com/ )の移植版

胸の奥と尻の穴が酸っぱくなる頃

俺たちの超てんちゃんの新曲「インターネットやめろ」が、発表された。令和の電波ソングである。電波ソングというのは、他人にそれを聞いていることを知られてはいけない音楽である。今よりもっと”オタク”が差別的な目で見られているとき、電波ソングはPC美少女ゲームの発展を背景に爆発的に増殖し、深夜アニメが市民権を得ると一気に絶滅した。そんな電波ソングはvaperwaveのように、聞かれなくなっていく音楽や廃れていく文化の悲哀を内包した存在であると同時に、薄ら寒く風化した風習を自嘲するようなコンプレックスも大いに感じられるものである。「インターネットやめろ」は電波ソングの要素として両者ともに持ち合わせているし、懐古厨・社会不適合者と罵られる俺らが散々聞いてきた平成の電波ソングを微妙に凌駕する包容力と神秘性が感じられる。その凄みの理由には、歌手である超てんちゃんが俺らと同じ痛みを持って生きていることが関係している気がする。

胸の内と尻の穴はどちらも同じもので、人に見せることは決して許されないものである。家族であろうと配偶者であろうと神父さんであろうと、誰にも晒すことのできないものが俺たちのソウルとアナルであり、本質である。そして電波ソングもまた、誰にも見られないところでこっそりと聞かれるものであり、尻の穴を覗き込むことで自らの身体と対話するように、電波ソングを通して胸の奥底にある自意識と向き合うことも可能になるというものだ。尻の穴も胸の奥も、自分で自分のものを見ることは難しいものである。そういった深淵の部分の触媒として電波ソングは存在していた。インターネットエンジェルは、過ぎ行き忘れ去られながらも、確かに私たちの頭上に影を落とし続けている。