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wordpressの日記( https://yajiriinu.wordpress.com/ )の移植版

探偵が来るバーどこにある?

お酒の味はお茶割り以外好きではないのであまり積極的に強い酒を飲むことはないが、探偵が来るような地下にあるレンガ造りのバーに行きたい。理由は建築物としての美を感じるからだ。バーで提供されるサービスそのものより、薄暗く橙色の昔の照明っぽい演出が好きで、橙色を最も鮮やかに引き立てるレンガの色と質感が空間中に色を分散させている感じが良い。

探偵が来るバーではこのようなやりとりがなされ、drinkに文書を添えて機密情報が交換される。アメリカのスタバでは、男性にしつこくナンパされていた女性客に従業員がdrinkを渡す際、カップのフタに「助けが必要ならおかわりをもらいに来て」と書いて連携していたらしい。そのような話もあるぐらいだから、バーになるとなおさらだろう。「あちらのお客から」の件は、単に接触するだけでなく情報を自然に交換できるからあそこまで定番になったのだろう。そして、そういった秘密が秘密のままやりとりされる現場として、バーという建造物は重要な演出をしている。最近やったジョーカーの映画に出てきた精神病院の、真っ白な立方体みたいな眩しい部屋では秘密は暴かれてしまいそうだ。そういう場では、絶対にジョーカー本人の人格の核心に触れるような”秘密”が暴かれることはない。いっぽうで、ダルそうなおばあちゃんがアパートの一角でやっていたちいちゃなカウンセリングではそこそこ自己開示していたと記憶している。このように映画でも、薄暗くて雑多で黄ばんだ感じの部屋と、眩しくて物がなくて真っ白な部屋とは対比関係にあり、空間の演出を分けることで、秘密と公開、閉鎖と開放といった人間心理までもが正反対に作用してくるのだ。おもしろいのは、秘密が保持される空間の方が、人の心は開放的になるということで、この場で話したことはその空間の外部に出たら永久に無効化・秘匿化されるという安全性が心を開かせているのだろう。

探偵が来るバーはその場限りの開放性と心地よい秘匿性が現場にいる人間同士の連携を深め、酒が進むことで進行も深まり、夜が深くなればなるほど秘密の永久的保持力は強まっていく。

ちなみに、バーの店内ではたいていBPM120以下のジャズ的なものが流れているが、個人的にはソウルフラワーユニオンのほうがあっているように思う。というか、ソウルフラワーユニオンはいつ何時流しても何の違和感もなく空間に馴染んでいくので、ドライブでもディナーでもパーティでもソウルフラワーユニオンのベスト盤を持参すれば間違いないといえる。誰が聴いてもギリ嫌じゃないようなわかりやすすぎない大衆性があって、照明が橙色でも白色でもなんだっていいように作られた音楽だろうから。